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株式会社中村製材所

2020/12/28

木材の地産地消で人と自然が共生できる社会へ

 アマゾン流域の豊かな森林が徐々に赤茶色の地面に変化してゆく―。熱帯雨林の乱伐を訴える地図を誰しも一度は目にしたことがあるだろう。しかし国内に目を移すと、伐採期を迎えた樹々が多く残されている。佐賀市諸富町にある株式会社中村製材所では、こうした矛盾に独自の取り組みで立ち向かっている。

森林大国・日本の木材自給率

 戦中・戦後の木材需要に対応するため、政府は昭和36年に「木材価格安定緊急対策」を決定し、木材輸入の拡大を推進。さらにその後、円高による輸入材拡大などの影響もあり、1990年代後半に木材自給率がついに20%にまで落ち込んだ。

 「日本の木材市場の8割は外国産材でした。量・質・値段ともに国産材よりも使いやすかったんです。特に広葉樹などの硬い木は外国産を使うことが当たり前になっていました。しかし、このままの調達方法だと次の時代は築けないという思いがありました。」

 26歳で業界入りした中村 展章さん(同社・代表取締役)。持続的な木材調達のためには地元資源を活用できる仕組みの構築が不可欠だと思いは、海外買い付けの経験によりさらに強固なものになった。

 中村製材所は1999年より国産材、特に地域材に触れる機会をつくるため、児童・生徒の机やイス、校舎の木造・木質化などに取り組み、2006年、FSC®認証木材の取り扱いを始めた。

人と自然の共生を目指すFSC®認証

 FSC®認証とは、「森林管理のための FSC®の10原則と基準」に基づき認証された、環境的、社会的、経済的に適切に管理された森林の林産物であることの証である。認証商品にはFSC®のロゴマークがついているので消費者にも分かり易い。認証製品が市場に増え、購入が進むことによって、適切に管理される森林が守られ、森林の破壊や劣化を招くことなく、木材消費が進むというシステムだ。

 とはいえ、基準に沿うための管理コスト等がかかるため、“安く・早く”に重きが置かれる資本主義経済においてFSC®認証木材の市場開拓は容易ではない。

 「ですが、FSC®認証を受けた木材を取り扱うことにより、森林から製材までサプライチェーン全体に関わるようになりました。大企業が地方の零細企業に発注するという下請構造が当たり前だったところに、木材の背景を伝えられることで大きな事業のコンセプト設計から関わることができるようになりました」と中村さん。

 SDGsの知名度向上にともないゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」が後押しとなっている。

写真:公式ホームページより

特許技術「SKINWOOD®」

 こうした中村製材所の理念を具現化した商品といえるのがSKINWOOD®だ。これまで用途が少なかった若い木(小径の木材)を活用し、つなぎ合わせて薄くスライスした新しい突板(超薄板)で、材の産地を指定することやFSC®認証材を使用することが可能だ。現在、佐賀県庁の知事室や来賓室の壁や家具に採用されている。

 森林保護というと手を加えずに見守ることが良策と思われがちだが、むしろ逆で、適度に人の手が入らないと、地面に日光が届かず土壌が貧弱になったり豪雨で地すべりを起こしたり災害につながることもある。SKINWOOD®は、使用シーンに応じて美しい木目を表現できるだけでなく、木の伐採サイクルを早めることで、森を健全な状態で保つ一助となっているのだ。

 「立派な木は保護して、人間が使う木は資源をコントロールできる範囲内で使っていくようにしましょう、というのが我々からの提案。今までは天然1点もの、これしかないという表現が価値の表現方法でしたが、それだと再現性はありません。この課題を解決するのがSKINWOOD®。事業としても持続可能で、かつ地球環境も守る。試行錯誤でたどり着いたここまでの集大成ともいえる商品です」と胸を張る。

写真:公式ホームページより

FSC®認証がいらない世界へ

 FSC®認証の木材を取り扱って3年経った。その間、事業を推進することに矛盾や葛藤を抱えることもあったという。腑に落ちたのは、FSC®認証木材のシェアが増えることがゴールではなく、FSC®認証などがいらない世界を目指していることに気がついた時だった。

 FSC®認証は人間が心地よく自然と共生できる世界を作るための1つの「ものさし」でしかない。すべての森林が環境負荷を考慮された状態にあり、そのことが当然のものとなったとき、そのものさしは不要になる。SDGsもまたものさしの1つと言えるだろう。

 自社の取り組みについて中村さんは「SDGsの存在を睨んで先駆的に取り組もうとしたわけでない。元からあった事業がたまたまSDGsの提唱によって伝わりやすくなった。自分たちの事例がSDGsについて納得感をもってもらえるきっかけ作りになればいいなと思ってやっている」と控えめに話す。

 「ルールによるガバナンスではなく、目標によるガバナンス」と言われるSDGs。誰もが今手に取れる範囲で取り組めること、そしてその身近な取り組みが世界と繋がるきっかけとなることを中村製材所の事例が語っている。

サガストEyes 「SDGsが世界の共通言語に」

 SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。

 かつて、国際的に有名なガーデニングコンテストに出場する日本チームを中村さんがサポートした際、ガーデニング用の資材だけでなく、使用する道具(剪定バサミなど)の柄もFSC®認証の木材でなければならないという主催者側からの指定があり驚いたという。

 ヨーロッパは特に環境保全に対する意識が高い。つまり、グローバルな事業展開を目指すのであれば、その意識の差を埋めることは今後必須になるということだ。

 SDGsは単なるスローガンではなく、ビジネスチャンスであることを示すエピソードといえる。

取材後記

 九州経済産業局発行の事例集への掲載や、ウッドデザイン賞や佐賀さいこう表彰の受賞など、輝かしい実績がありながら、「今までコツコツやっていたことが、たまたまSDGsで表現しやすくなっただけ」とあくまで謙遜される姿が印象的でした。

 SDGsは確かに抽象度が高く最初の取っ掛かりを見つけるまでが大変ですが、“今までやってきたこと”つまり自分の生活を見直すだけでもたくさんのヒントが転がっていることに気づかされます。

 SDGsへのコミットメントがビジネスチャンスを生む時代。SDGsがすでに世界の共通言語になりつつあることを感じました。

会社概要

SDGsが広げるビジネスチャンス

 昭和25年古くから木工業が盛んな佐賀市諸富町にて創業。2006年にFSC®認証を受け、九州電力が管理するFSC®認証森林から木材や木製品の提供を行っている。

 例として、スターバックスコーヒーが進める環境に配慮した店舗建築のサポートを行った福岡大濠公園店は、米国のクリーン環境建築基準「LEED認証」の新築カテゴリーを世界中のスターバックス店舗で初めて取得した。また、三越日本橋本店のリニューアルオープン時には、FSC®認証木材を使用した椅子「topo」が採用された。

 2018年「SKINWOOD®」がウッドデザイン賞を受賞。また、2019年佐賀さいこう企業を受賞。

 
事業者名 株式会社中村製材所
代表者 中村 展章
電話番号 0952-47-3100
本社所在地

佐賀県佐賀市諸富町為重385-1

ホームページ

http://kanejin.jp/

特定非営利活動法人灯す屋

2020/12/28

ウチとソトを繋ぎ、将来まで続く有田のまちへ

 何十年も使われていない空き物件の利活用やマッチング、移住者の支援や後継者の育成支援、「うちやま百貨店」の企画・運営、「ちゃわん最中」の企画・販売など。NPO法人灯す屋の活動は多岐にわたっているが、そこには“まちの未来に、あかりを灯す”というキーワードをもとに、ウチとソトをつなぐ人の姿がある。

有田の未来に明かりを灯したい

 空き物件の利活用推進、移住・定住支援などを通して、“有田町に住みたい”“住み続けたい”と思ってもらえる場所になるように、まちの未来に明かりを灯すまちづくりをしているNPO法人灯す屋。

 空き家活用や移住については社会的な関心も高まってきているものの、まずは何から手を付けたらいいのか分からないという方も多い。そうした方々に対して、灯す屋は現地コミュニティや不動産業者、建築士、行政書士などの専門家とのネットワークを生かして、相談から解決までワンストップでサポートをしている。

 また、有田町まちづくり課のサテライトオフィス「まちのオフィス春陽堂」に、空き家・移住の相談窓口を開設し、行政とも連携している。

ターニングポイント

 代表理事の佐々木元康さんは、最初から有田が好きだったわけではない。大学進学を機に上京し、大手製薬会社の研究者として都心で勤務していた佐々木さんにとって、ふるさとである有田はむしろコンプレックスでもあったという。焼き物は時代遅れの、古くさい趣味くらいにしか思っていなかった。

 そんな佐々木さんに転機が訪れたのが、2011年3月の東日本大震災だった。友人とボランティアチームを立ち上げ、毎月被災地に向かった。現地で、悲惨な光景にも負けず立ち上がろうとする地元の方々の熱意とふるさとを思う気持ちに触れ、我を顧みた佐々木さんの心に変化が生じた。「自分も有田で何かできないだろうか。」そう思った佐々木さんは、7年半勤務した製薬会社を辞め、地域おこし協力隊としてUターンすることを決意した。

有田町のソトとウチの”つなぎ役”として

 佐々木さんの役割の1つは、空き家を再利用する際の問題を明確にしていき、空き家の活用や移住を考えている人へ橋渡しをする“つなぎ役”だ。

 「空き家が欲しいという人と売りたいという人のマッチングが重要。その中で空き家が欲しいという人の理想などがあるから、上手く機会が合うことは難しい」と話す。

 しかし仮にうまく物件とマッチングしたとしても地域に馴染んで生活できるかどうかが重要。

 そのために、佐賀県内への移住希望・移住者、地域住民が参加する交流会「MEETUP!SAGA」等、様々な移住者支援事業を行っている。

未来に向けて何かを少しずつ

 「今すぐは成果が見えてこないかもしれないけど、10年後、20年後にいまの自分たちのように『まちの暮らしを良くしたい』と思って活動する人が集まる場が残っていればいい。自分たちがこういう活動をしていくことによって、外から色んな新しい人に来て欲しいし、今、有田に住んでいる人たちが将来もずっと有田町に住み続けたいと思えるような町にしたい。そして、このまちが持続的に将来までちゃんと続いていくような活動をしていきたい」という思いをもつ佐々木さん。

 有田町のウチとソトのつなぎ役として。有田がもっと“開かれた町”になっていくようにこれからも活動していく。

サガストEyes 「二十数年前に消えてしまった茶わん最中を復活!」

 

 有田町には二十数年前、「茶わん最中」という銘菓があった。だが、製造販売を行っていた店が閉店となり、同時に茶わん最中もその姿を消してしまった。その茶わん最中を、灯す屋でリニューアルし復活させた。リニューアルした「ちゃわん最中」は、有田焼の蓋付き茶碗の形を模した最中で、餡を詰めるだけでなく、アイスを入れたり、フルーツや白玉を添えたりしてアレンジを加えて楽しむこともできる。贈り物や手土産、お中元やお歳暮におすすめの商品だ。

 「有田は焼き物の町というイメージがあるから、焼き物が好きな人や作り手の人たちはよく訪れる町ではあるが、そうじゃない人たちがなかなか関わらない町。それを少しでも変えたい。この茶わん最中やイベントを通して有田町に様々な人々が訪れ、もっといろんな人が有田町に関わってもらいたい。そして、おもしろい町だなと感じてほしい」と話す。

取材後記 まちの未来のために

 

 町のために何かしたいと思っている人はたくさんいるかもしれないけど、佐々木さんのように自ら行動し、少しずつ町を変えていき、それを形にしている人は少ないのではないかと感じました。使わなくなった空き家を壊すのではなく、リノベーションしてまた再利用したり、空き店舗を利用してイベントを開催したり、新しい企画や販売をするなど、町のために様々な活動をしていくことがどれだけ大変で難しいことなのかを学びました。また、イベント時の賑わいがいつか日常的な景色になるといいなと思いました。私は特に、“すぐには成果が見えないかもしれないけど、10年後、20年後に形として残っていればいい”と佐々木さんが取材時に言っていた言葉がとても印象に残っています。すぐに成果が見えなくても、何かを少しずつやっていくことで、それが将来の町のためになっていくんだなと実際に話を聞いて思いました。

 今回のように企業の方から実際に話を聞き、取材をして記事を書くことは初めてのことで、とても貴重な体験でした。お忙しい中取材に応じてくださり、本当にありがとうございました。

会社概要

有田町のために今すべきこと

 灯す屋は、空き家・空き店舗をワンストップでサポートしたり、不動産業者と一緒に空き物件を見学するツアーを開催したり、有田町の空き店舗の活用を目的とした「うちやま百貨店」の企画・運営をしている。その他、移住支援として交流イベント「MEETUP!SAGA」の企画・運営、茶わん最中の企画・販売、高校生や大学生が地域と関わる活動の教育支援を行い、有田の将来のために様々な活動をしている。

 
事業者名 非営利活動法人灯す屋
代表者 佐々木 元康
電話番号 0955-29-8929
本社所在地

佐賀県西松浦郡有田町大樽2-3-21

ホームページ

https://tomosuya.com/

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