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大富牧場 FLYING COW

プリンに込められた様々な仕掛け

 11年前は、佐賀県には107戸の酪農家戸数があった。しかし、「休みがない」「大変」「汚い」といった様々な理由があり深刻な後継者不足で現在は38戸にまで減少している。そんな厳しい中でも、夫婦二人三脚で町のために取り組みを行っているのが、酪農と肥育牛生産を行う「大富牧場」だ。
 この大富牧場が手掛ける「牧場プリン3」はおいしいだけではない様々な仕掛けがあった。

酪農とは無縁だった

 古民家を改修した店舗には朝からプリンを求める人が続々と訪れる。店内から聞こえる元気な声の主は人気商品「牧場プリン3」の生みの親である大富藍子さんだ。

 大富さんは佐賀県出身。高校卒業を機に上京し、演劇の道に進んでいた。しかし、母親の病気をきっかけに佐賀に戻った。当時は、酪農に対してまったく無縁の存在であった大富さん。そんな大富さんが酪農と出会ったのは、のちに夫となる力さんとの結婚がきっかけだった。

 「酪農の仕事とはどのようなことをしているのだろうとは思ったけど、酪農の道に進もうと思ったことは一度もないんです。出会った人が酪農家だった」と大富さん。

 酪農といえば、大地で穏やかに草を食む牛たちを想像していた大富さんだったが、現実は遠くかけ離れたものだった。毎日餌やり、搾乳や掃除、牧草づくりの日々に追われ休む間もなく働く力さんの姿を見て酪農の仕事はこんなにも忙しいのかと驚く大富さんだった。

自社オリジナル商品で、町の人と交流したい

 「牧場プリン3」を作り始めたのは2015年のことだ。当時、育児により牧場仕事から離れていた大富さん。毎日汗水流して働いている力さんや従業員さんたちの成果を形にしたいと思うようになった。

 今まで、大富牧場で搾った生乳などはすべて乳業メーカーなどに出荷されていたため大富牧場が作ったオリジナル商品がなかった。そこに目をつけた大富さんは、自社オリジナルの商品を作るだけでなく、そこから地域活性化に貢献できて、地域との繋がりのきっかけになるようなものを作りたいと考えた。

 しかし、自分だけで、製造工場の確保・包装パッケージ等をゼロから作るとなると最初の費用だけでも大きな出費となる。そこで悩んだ末に、子どもから高齢者まで幅広い年齢層に愛されることや今ある場所を改装してできることなどを考慮しプリンを作ろうと決意。決め手となったのは牧場でしぼった生乳をふんだんに使ったプリンに子どもが大喜びする姿だった。

立ちはだかる壁

 大富牧場オリジナル商品を作るべく、毎日試行錯誤を繰り返し、講習に行きプリン作りに励んできた大富さんだったが、当初はただ遊んでいるだけではないのか?と周りの目は冷ややかだった。

 大富さん個人の趣味だと受け取られたり、収入に反映しないといわれたりした。試作コストがかさむ一方で納得のいく商品ができないプレッシャー、更になかなか得られない周囲の理解。誰もが挫けてしまいそうな状況だが、大富さんは違った。「何も言われないようになるまで、成果が認められるようになるまでがんばってやろう」という考えに至ったのだ。その結果、何とか少しずつ成果が出ているように見えたが…

 オーブンを新しく変えた矢先に突然プリンが作れなくなってしまった。何度同じ要領でやっても納得いく出来にならない。

 また、当時は5歳・2歳の子育て真っ只中。追い打ちをかけられた大富さんは、円形脱毛症になってしまった。大富さんは当時を振り返って、「毎日プリンの夢を見るようにまでなって。見知らぬ人からプリンの生焼けを指摘されるような夢でうなされていたんですよ」と笑った。

失敗作がきっかけに

 試行錯誤を続けていたある日、知人の子どもが遊びに来た。失敗作だと承知の上でプリンをあげるとその子は、顔をほころばせ「おいしい!!」ととても喜んでくれた。それ以降、店に遊びに来てはプリンを欲しがるようになり、大富さんは「こんなプリンでも喜んでくれるんだ」とまたプリン作りに取り掛かった。

 プリン作りを初めて約3年。紆余曲折を経て完成した大富牧場の「牧場プリン3」は口コミで広がり、小窓販売のプリンはいつも瞬く間に完売。現在では通信販売も行い年間2万個を販売するほどに成長し、大富牧場の看板商品になった。

 おいしいだけでなく地域とのつながりを生み出す商品を目指してスタートしたプリン作り。大富さんは「プリン作りが地域の方々との距離を縮めるきっかけになったけれど、まだまだ道半ば。もっとたくさんの商品を作りたい」と意欲を見せる。

サガストEyes 「『simple for smile~子供たちを笑顔に~』を合言葉に!!」

その名のとおり「牧場プリン3」には「3」にまつわる様々なこだわりがある。

① 材料3つ「佐賀県産の卵・大富牧場の牛乳・こだわりのサトウキビ」

② 搾りたてから3時間以内の生乳

③ 環境にやさしい3ステップの循環式農業。

④ 「無香料」「無着色」「無添加」

⑤ おひさまの「SUN」

⑥ 夫・力さんが大富牧場の3代目であること     等々

 市販のプリンには、通常バニラビーンズ、洋酒、乳化剤、ゼラチン、生クリームなどが使われているが、牧場プリンが目指したのは「引き算のおいしさ」。このシンプルな工程がおいしさの秘密であり、子どもから高齢者まで愛される理由だ。

 また、大富牧場ではプリンだけでなく、シフォンケーキや季節のフルーツを使った焼き菓子も販売している。今後、大富さんは、牛乳せっけんやハンドクリームなど、食品だけにとどまらないより多くの商品を作りたいと考えている。

 また近隣地域と連携し、保育園や小学校などに酪農の楽しさや知識を教える食育活動なども行い、地域とのつながりを大切にしていく。

取材後記 取材を通して佐賀の魅力を知れた

 今回、大富牧場の大富さんに取材させていただき、とても家族のために町のために活動しているのだと熱い思いが伝わってきました。

 佐賀県に限らず、酪農という職業が薄れていく中でもこんなに熱心に活動を行っている大富さんを尊敬します。私は、福岡出身で大学が佐賀だったというだけで佐賀のことを全然知りませんでした。しかし、この取材を通して佐賀の魅力がたくさん知れたと思いました。 

 貴重な体験をさせていただきありがとうございました。

 (西九州大学  1年  原口愛心)

会社概要

“Simple For Smile”-まちと繋がるプリン-

 佐賀県みやき町にある大富牧場は、約50年続く酪農家。「牛の健康は人の健康にもつながる」「酪農で地域、社会貢献」を理念に250頭以上の牛を飼育している。また飼育だけでなく、大富牧場が育てた牛の牛乳を生かし、プリンや焼き菓子を販売している。

 記事に登場した「牧場プリン」は大富牧場から少し離れたみやき町蓑原の古民家で販売をしており、営業日は毎週金曜日(11時~16時)と第3土曜日の(9時~12時)。毎月第一金曜日には様々な地域の方々・店舗とコラボ企画を開催している。なお、イベント・営業日・場所等の情報は随時FacebookやInstagramで発信されている。また、毎週金曜日の朝には、農業女子が自分の畑でとれた農産物を販売中。

 
事業者名 大富牧場 FLYING COW
代表者 大富 藍子
電話番号 090-4812-1215
本社所在地

佐賀県三養基郡みやき町簑原708

ホームページ

https://www.instagram.com/flyingcow_ohtomi/?hl=ja

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