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就活探検隊×サガスト

株式会社中村製材所

木材の地産地消で人と自然が共生できる社会へ

 

 アマゾン流域の豊かな森林が徐々に赤茶色の地面に変化してゆく―。熱帯雨林の乱伐を訴える地図を誰しも一度は目にしたことがあるだろう。しかし国内に目を移すと、伐採期を迎えた樹々が多く残されている。佐賀市諸富町にある株式会社中村製材所では、こうした矛盾に独自の取り組みで立ち向かっている。

 

森林大国・日本の木材自給率

 

 戦中・戦後の木材需要に対応するため、政府は昭和36年に「木材価格安定緊急対策」を決定し、木材輸入の拡大を推進。さらにその後、円高による輸入材拡大などの影響もあり、1990年代後半に木材自給率がついに20%にまで落ち込んだ。

 「日本の木材市場の8割は外国産材でした。量・質・値段ともに国産材よりも使いやすかったんです。特に広葉樹などの硬い木は外国産を使うことが当たり前になっていました。しかし、このままの調達方法だと次の時代は築けないという思いがありました。」

 26歳で業界入りした中村 展章さん(同社・代表取締役)。持続的な木材調達のためには地元資源を活用できる仕組みの構築が不可欠だと思いは、海外買い付けの経験によりさらに強固なものになった。

 中村製材所は1999年より国産材、特に地域材に触れる機会をつくるため、児童・生徒の机やイス、校舎の木造・木質化などに取り組み、2006年、FSC®認証木材の取り扱いを始めた。

 

人と自然の共生を目指すFSC®認証

写真:公式ホームページより

 

 FSC®認証とは、「森林管理のための FSC®の10原則と基準」に基づき認証された、環境的、社会的、経済的に適切に管理された森林の林産物であることの証である。認証商品にはFSC®のロゴマークがついているので消費者にも分かり易い。認証製品が市場に増え、購入が進むことによって、適切に管理される森林が守られ、森林の破壊や劣化を招くことなく、木材消費が進むというシステムだ。

 とはいえ、基準に沿うための管理コスト等がかかるため、“安く・早く”に重きが置かれる資本主義経済においてFSC®認証木材の市場開拓は容易ではない。

 「ですが、FSC®認証を受けた木材を取り扱うことにより、森林から製材までサプライチェーン全体に関わるようになりました。大企業が地方の零細企業に発注するという下請構造が当たり前だったところに、木材の背景を伝えられることで大きな事業のコンセプト設計から関わることができるようになりました」と中村さん。

 SDGsの知名度向上にともないゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」が後押しとなっている。

 

特許技術「SKINWOOD®」

 

写真:公式ホームページより

 

 こうした中村製材所の理念を具現化した商品といえるのがSKINWOOD®だ。これまで用途が少なかった若い木(小径の木材)を活用し、つなぎ合わせて薄くスライスした新しい突板(超薄板)で、材の産地を指定することやFSC®認証材を使用することが可能だ。現在、佐賀県庁の知事室や来賓室の壁や家具に採用されている。

 森林保護というと手を加えずに見守ることが良策と思われがちだが、むしろ逆で、適度に人の手が入らないと、地面に日光が届かず土壌が貧弱になったり豪雨で地すべりを起こしたり災害につながることもある。SKINWOOD®は、使用シーンに応じて美しい木目を表現できるだけでなく、木の伐採サイクルを早めることで、森を健全な状態で保つ一助となっているのだ。

 「立派な木は保護して、人間が使う木は資源をコントロールできる範囲内で使っていくようにしましょう、というのが我々からの提案。今までは天然1点もの、これしかないという表現が価値の表現方法でしたが、それだと再現性はありません。この課題を解決するのがSKINWOOD®。事業としても持続可能で、かつ地球環境も守る。試行錯誤でたどり着いたここまでの集大成ともいえる商品です」と胸を張る。

 

FSC®認証がいらない世界へ

 

写真:公式ホームページより

 

 FSC®認証の木材を取り扱って3年経った。その間、事業を推進することに矛盾や葛藤を抱えることもあったという。腑に落ちたのは、FSC®認証木材のシェアが増えることがゴールではなく、FSC®認証などがいらない世界を目指していることに気がついた時だった。

 FSC®認証は人間が心地よく自然と共生できる世界を作るための1つの「ものさし」でしかない。すべての森林が環境負荷を考慮された状態にあり、そのことが当然のものとなったとき、そのものさしは不要になる。SDGsもまたものさしの1つと言えるだろう。

 自社の取り組みについて中村さんは「SDGsの存在を睨んで先駆的に取り組もうとしたわけでない。元からあった事業がたまたまSDGsの提唱によって伝わりやすくなった。自分たちの事例がSDGsについて納得感をもってもらえるきっかけ作りになればいいなと思ってやっている」と控えめに話す。

 「ルールによるガバナンスではなく、目標によるガバナンス」と言われるSDGs。誰もが今手に取れる範囲で取り組めること、そしてその身近な取り組みが世界と繋がるきっかけとなることを中村製材所の事例が語っている。

 

サガストEyes 「SDGsが世界の共通言語に」

 

 SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。

 かつて、国際的に有名なガーデニングコンテストに出場する日本チームを中村さんがサポートした際、ガーデニング用の資材だけでなく、使用する道具(剪定バサミなど)の柄もFSC®認証の木材でなければならないという主催者側からの指定があり驚いたという。

 ヨーロッパは特に環境保全に対する意識が高い。つまり、グローバルな事業展開を目指すのであれば、その意識の差を埋めることは今後必須になるということだ。

 SDGsは単なるスローガンではなく、ビジネスチャンスであることを示すエピソードといえる。

 

取材後記 

 

 九州経済産業局発行の事例集への掲載や、ウッドデザイン賞や佐賀さいこう表彰の受賞など、輝かしい実績がありながら、「今までコツコツやっていたことが、たまたまSDGsで表現しやすくなっただけ」とあくまで謙遜される姿が印象的でした。

 SDGsは確かに抽象度が高く最初の取っ掛かりを見つけるまでが大変ですが、“今までやってきたこと”つまり自分の生活を見直すだけでもたくさんのヒントが転がっていることに気づかされます。

 SDGsへのコミットメントがビジネスチャンスを生む時代。SDGsがすでに世界の共通言語になりつつあることを感じました。

 

会社概要

 

SDGsが広げるビジネスチャンス

 昭和25年古くから木工業が盛んな佐賀市諸富町にて創業。2006年にFSC®認証を受け、九州電力が管理するFSC®認証森林から木材や木製品の提供を行っている。

 例として、スターバックスコーヒーが進める環境に配慮した店舗建築のサポートを行った福岡大濠公園店は、米国のクリーン環境建築基準「LEED認証」の新築カテゴリーを世界中のスターバックス店舗で初めて取得した。また、三越日本橋本店のリニューアルオープン時には、FSC®認証木材を使用した椅子「topo」が採用された。

 2018年「SKINWOOD®」がウッドデザイン賞を受賞。また、2019年佐賀さいこう企業を受賞。

 
事業者名 株式会社中村製材所
代表者 中村 展章
電話番号 0952-47-3100
本社所在地

佐賀県佐賀市諸富町為重385-1

ホームページ

http://kanejin.jp/

 

 

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